3/17 日記

なんとなく、山形美術館に行ってみようと思って1日を始めた。こっちに住んでから美術館に行ったことがまだなかったから(そもそも美術館というものが僅かしかない)、ほとんど義務のような気持ちで。

Googleマップで、美術館の近くに良さそうな定食屋さんがあるのをの知ったので、そこでカキフライ定食を食べてから絵を見ようと思っていたけど、着いた時間にはすでにランチ営業が終わってしまっていた。

改めてマップをくるくる回して、15時までやっている中華料理屋さんを見つけて、そこに入った。褪せた赤色の内装で、中国人の中年女性が一人で切り盛りしているようだった。薄暗くて、コップを置く音が空間全体に響くくらいに静かで、天井には蜘蛛の巣が張っていた。私が入店した時点で、1人で来ている女性が2人いて、私を含めて3人が、1人1台の4人がけのテーブルで同じ方向を向いて食べたり料理を待ったりしていた。目の前の本棚には、ドラゴンボール島耕作ナニワ金融道が並んでいた。

餃子が有名なお店らしく、北京風ジャージャー麺とセロリ餃子を注文した。味はものすごく美味しいというわけではなかったけど、存在しないと思っていた私の「チャイニーズレストラン」のイデアというか、記憶にこびりつきそうな飲食体験だったので、とてもよかった。

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(写真を撮るのが憚られる静けさだったので餃子の写真は撮れなかった)

山形美術館は、基本的には地方の美術館の平均値という感じで、掛け軸と、地元の作家の油絵と、印象派〜近代の王道画家というラインナップだったけど、新海竹蔵、深海竹太郎、髙山辰雄等の彫刻がよかった。あとキャプションがとても丁寧だった。割とコンパクトな展示数なのもありがたい……。企画展で地元の公募の写真展をやっていて、結構楽しんで見られた。けど、土地柄自然とか生き物のモチーフが多いこともあってか、写真の技量とか作家の個性というより奇跡の瞬間ゲーだな〜、と思うような感じだった。私の知ってる良い写真とだいぶ違う。そういうことが色んなジャンルで起こっているんだろう。というか普通に写真展の方のボリュームが多すぎてウケた。1000枚くらいあった気がする。応募したら全員展示してもらえるのかな?じゃあ尚更なんであんなに偏ってるんだろう?年齢層?(名前と題と市町村しか書いていなかったためわからない)

美術館の隣にあった雑貨屋さんで、細くてきれいな真鍮のリングが770円で売られていたのでなにごと?と思い買ったら、お店の人が打って作ったものらしかった。尚更なにごと?

行ったことのない古本屋さんも近くにあったので寄った。店頭の印象は地元の地誌関係しか置いてません、みたいな感じなのに、入ってみたら以外とオールジャンル網羅されてる感じで驚いた。川上弘美の短編集の文庫と現代歌人文庫の塚本邦雄を買った。紙の本は増やさないと思っているのに、初めて入るお店に入ったら何か買わなきゃ、と思ってしまうところがあるので本に限らず良くない。山形にいるのがおそらくあと2年くらいであることを考えて、記念品みたいな気持ちで買ってしまうのもある。色んな土地の色んなお店で集めた物をいつか建てる一軒家に結実させるのだという意外な欲望が私にはある。

帰ってから、自分が寄稿している『現代短歌』2024年5月号を受け取って読んだから、それも色々心が動いたのですが、また別のところで書きます。

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1/18 日記

研修のためのホテル暮らしが始まって10日が経った。学生時代のように講義を聞いて、同期と同じ食事を食べて、同じ建物でそれなりの時間に眠りにつく生活は、ずっとどこかの感覚を麻痺させているような気がしつつ、人数が多い分「見られている」緊張感が薄くて、そういう意味では悪くないかもしれないと思う。近くにどでかいイオンがあるのも、装置のすべてが典型的に思えてきて面白い。怖くもあるから、昨日から、100均で買った小さいスケッチブックと4Bの鉛筆を使って寝る前にデッサンをしている。この先毎日描き続けて何かを見出したことにして人生の中に絵をもう一度入れ込んでいくのかもしれないなと、私はもう物語の捏造の準備をしている。でも、物語化についてあてもなく悩むのは一旦やめにすると決めた(1/18だけかもね)。私は(私たちは)自分を駆動させうるなるべくたくさんの物語を予知して、はっきりと選択する必要がある。他人に書かれた物語を修正する必要がある。ひとまずそれだけということにする。安い紙に安い鉛筆と大きな消しゴムで書くデッサンは、影よりも光を描くことが難しい。と、いうか、デッサンの場合光はキャンバス(紙)の白で表現するから、キャンバスはもともとすべて光で、線は全部影なんだよな、という単純でholyなことを、昔は気づいたことなかったな。昨日はTujiko Noriko 、今日は森田童子を聴きながら描きました。

12/15 日記

朝、起きた時点から胃腸の調子が悪くて仕事を休もうかと思うくらいだったけど、重要業務があったので出勤した。私の仕事は担当のお客さんに予約を取ってもらって1人で対応するのがメインの業務だからあんまり替えがきかなくて、やりがいはあるけどこういうとき休みにくくてしんどいなと思う。結局ずっと調子が悪いまま仕事してたけど、溜まってた仕事の見通しがついたので無理してよかった。

やっとの思いで帰宅して何気なくTwitterを見ていたら、私が愛好しているキャラクターであるマムアンちゃんの作者が性加害をしたことで女性に告発され、そのことを認めているという記事が流れてきて、勘弁してくれ、と思った。自分が好きなアーティストのことでここまでショックを受けたのは初めてかもしれない。大森靖子を盲信しているけれど盲信しているがゆえに何があっても別にショックは受けなかったし(全然話が逸れるけれど私は大森靖子を「盲信」していることをはっきりと自覚しており、そういう姿勢で好いていることそれ自体をとても重要視している。分からないなら別にいい)、私にとってアクチュアルな問題であったことがあんまりなかったというのもある。

とにかく性加害であることがショックで、女性を馬鹿にしている人が書いた女の子のキャラクターに励ましを受けていたことがかなしい。

「作品に罪はない」とかは、作者は真剣にその作品を作ってないし、こちらが真剣に作品を受け止める必要もない って言ってるのと同じだと思う。空虚な言葉。たった1人の人間が後ろにいるから価値があるのであって、責任逃れができる隙を与えるのって受け手として誠実な態度ではないと思う。

実際的な問題として、それなりにグッズを持っているので見るたびに思い出してつらいというのがある。

週末は放っておいていた、胃腸とは別の不調について診てもらう予定もあるし、なんとか保たないとね。

Free For Palestine...

10/16 日記

かなり寒くなってきたけれどまだ暖房をつけずに耐えている。

仕事終わりにバスで駅に行き、本屋で装苑とキャンパスノートを買い、安い服屋で仕事のとき用の暖かい服を買い、ドラッグストアで切らしていた化粧品を買い、偽カルディで欲しかったペンネやバジルソースやキャラメルルイボスティーというクリスマスみたいな飲み物を買い、ロッテリアハニーマスタードチキンバーガーを食べた。

セットのドリンクを頼むとき、メニューの枠内にSMLの3種類があったのでSを頼んだら、「セットドリンクはMサイズとなっております」と言われた。マックでも同じ間違いを何度かした気がする。

ジンジャーエールを飲みながら装苑を読む。特に目当ての特集があったわけではなく(目当ての特集なんてなくても装苑は買えば何かしら好きなものが載っているという意味で私の選択としてかなり保守的である)、最近自分に広義の美意識が欠けていてつまらないと思っていたので買った。東佳苗と田中大資の対談が読めてよかった。でもモデルの感じとかを見ていてこういう雑誌こそもっとアバンギャルドな人選とか特集とかしたほうがいいんじゃないの、とか、業界の白人・健常者しか見えていない感じに辟易したりもする。

恋人が「LOVE」と書いたお好み焼きの写真をLINEで送ってきたので私に言っているのかと聞いたらそうだと言われて、書いた本人が食べているところを想像して私は拗れた喜び方をした。

 

犬と人つながりながら歩きおり蚊は降りながら死ぬる初秋を/内山晶太

 

「川と川を繋ぐものが橋だ」を聞いて遠くにうっすら浮かんでたのってこれかー。

10/9 日記

昨日と今日、福岡の友達が仙台に来ていたので、私は2日連続高速バスを利用して仙台ー山形間を往復した。

1日目の昼に食べたスープカレーのお店で隣の席の男性2人組が震災の話をしていた。

1人が、「津波発生時に沿岸で運転していて、渋滞の前のトラックの運転手が車外に出て山の方に逃げたのを見て後を追って助かった」という話を、記憶に引きずられるように、相手が相槌を打つまでもなく話していて、盗み聞きなのに聞き入ってしまった。

2日目の今日、仙台駅前でバスを降りて集合場所に向かおうとした時、消防車の大群が見えた。明らかに非常事態という感じだったのでTwitterで検索をすると、どこかで薬品が漏れて負傷者が出ているという断片的な情報を得た。

危険な空気を吸いたくないので、友達に「ちょっと迂回します」とLINEをして遠回りをした。歩きながら情報を追っていると、新幹線の車内の話で、特に辺り一体に広がっているみたいな感じではなさそうだった。それでもなんとなく、有事の空気感に飲まれるのが怖くて遠回りをし続けていた。

去年の秋も、高円寺の火事に居合わせたことを思い出した。

夜、友達と別れる直前に「世界情勢が大変ですね」という話をしていたら、友達が「イスラエルに旅行してた友達が急遽飛行機で避難することになったってストーリーを上げてた」と話していて、私は全く知らない人だけれど、無事帰国できた旨のストーリーを見せてもらって安心した。

仙台は訪れるほどに掴みどころのない街だと思う。グレープバインが「あと6億曲やります!」と言っていた。定番のMCらしい。

 

サイダーの匂いがするときみは言うわたしはぜんぜんわからなかった/橋爪志保

7/9 日記

山形に引っ越して1ヶ月半くらい。

・駅近のラーメン屋さんで冷やしラーメンを食べた。はじめて食べた。実家でよく使っていたドレッシングの味がした。全部のラーメン冷たくていいよ。

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山形駅の駅中の書店がなぜか短歌の品揃えつよいから、7割くらいの確率で『標準時』置いてるだろうなーと思って、そのために駅の方まで行ったのだけど、なかった。職場で使うノートとマスキングテープを買った。読みたい小説『ハンチバック』もなかったからKindleで買った。

・ジャズ喫茶に行った。私が入ったときは50-60代くらいの人しかいなかったけど、あとから大学生くらいの人2人が1人ずつ来てそわそわした。ジャズ感度激低だからサックスが入ると全部浮かれて聞こえてハマれないな……と思っていたらピアノメインのしっとりしたレコードに変わって良かった。その場の雰囲気で盤を選ぶみたいなこと普通にしてるはずだから、私がそういう波動を出していたのかもしれないと本気で思う。

・中古のCDとかレコードとか楽器とかオーディオ機器とかがたくさん売られている場所に行った。ミイラズのCDがやたらあって嬉しかった。アコギほしいのとエレキギター習いたい、がある。

・水分多めのラタトゥイユをつくったりなんかめちゃくちゃ部屋を片付けたりした。

・油断の結果怒りと悲しみが雪崩れてただただ涙を流すのを30分くらいやってやっと落ち着いたところ。怒ろうにもそういう執着のすべてが私が負けていることの証明になってしまうのだよなと思うけど本当はそんなことないのかもしれないけどわからない。怒りを怒りとして発現することを抑制できるだけの力でもっと明晰になりたかった。私はあなたにすべてを話していないからあなたに嘘をついている、そのことでずっと空笑いをしているよ。

↓私=看板、なら許せるけど さ

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